ウォレット業や現物取引の規制 「仮想通貨」の呼称変更を検討=金融庁の第9回研究会
金融庁は12日、仮想通貨交換業等に関する研究会の第9回会合を開いた。会合では主に「ウォレット業者に対する規制」や「不公正な現物取引への規制」、「仮想通貨の呼称」について集中的に意見交換がなされた。
ウォレット業者に対する規制
現在ウォレット業者は、顧客の仮想通貨を管理したり送金したりする業務を担っているが、仮想通貨の売買は行わないため資金決済法上の仮想通貨交換業には該当しない。しかしサイバー攻撃による顧客の仮想通貨の流出やマネーロンダリング・テロ資金供与などのリスクが考えられるため、金融規制を導入するべきかが論点となった。
また10月19日にFATF(金融活動作業部会)が、仮想通貨交換業に加えてウォレット業務もマネロン・テロ資金供与規制の対象にすることを各国に求めたという経緯もある。
規制の内容としては、登録制や内部管理体制の整備、顧客の本人確認など仮想通貨交換業のうち顧客の仮想通貨の管理に係る対応が求められると考えられるほか、みなし業者である間の対応などが話し合われた。
研究会のメンバーは、概ね規制の導入に賛同。「顧客の資産に対する被害を防ぐ意義がある」や「金融当局が把握できない形があってはならない」といった声が出たほか、「法定通貨で言うところの銀行のような機能を果たしているため、それ相応のセキュリティが必要」という見方が出た。
一方、ハッカーが海外のウォレット業者に送金した場合、日本の法律がどれほど適用できるのか不透明な点がある。このため「FATFをはじめ諸外国が協力して法整備を進める必要がある」という声も上がった。
不公正な現物取引への規制
仮想通貨の現物取引において、様々な不正行為が問題になっている。例えば、新規仮想通貨上場などの未公表情報を仮想通貨取引所から入手して利益を得たり、仕手グループによる価格の吊り上げ・売り抜けといった事例が報告されているという。
金融商品取引法(金商法)では、不正行為や風説の流布等、相場操縦、インサイダー取引などが禁止されているが、仮想通貨の現物取引における不正にも金商法が適用されるべきが議論になった。
この問題に関して多くのメンバーは、「仮想通貨市場は株式市場と重要性が異なるため、金商法ほど厳しく規制する必要はない」という見方を示した。「相場操縦やインサイダー取引の場合は市場がどこにあるかを考える必要があるが、仮想通貨の場合、現時点ではそれが分からない」といった声や「(資本市場の形成に必要不可欠な)有価証券のような社会的意義を認めることが難しい」という声が上がった。また「国民の税金を使ってどこまで監督すれば良いか話が見えない」や「自己責任」という意見も多く聞かれた。
ただ、不正を放置して良いという訳ではなく、あくまで規制の枠組みが金商法と同一と考えづらいというのがメンバーの考え方だ。何らかの罰則規定を新たに設けるにあたり、1. 不公正な取引が行われることを禁止すると明確化、2. 取引の透明化、それによる監視の強化 3. 執行力の確保を訴える意見が出た。また、警察による捜査能力を高めることが先決という見方も出た。一方、規制が整備されるからといって、仮想通貨が本源的な価値を持つ訳ではないと釘を刺すメンバーもいた。
仮想通貨の呼称
資金決済法でもメディアでも「仮想通貨」の呼称が広く使われている。金融庁はそもそも「仮想通貨」という呼称を使い始めた理由を次のように説明した。
・FATFや諸外国の法令等で用いられていた「Virtual currency」の邦訳であること
・日本国内において「仮想通貨」という名称が広く一般的に使用されていたこと
しかし最近、G20等の国際会議で「暗号資産」との表現が用いられつつあるという。「仮想通貨」という呼称を使い続けるべきなのか、議論になった。
「仮想通貨」という呼称を使いつづけることに対して、メンバーからは多くの異論が出た。そもそも当初は「仮想通貨が通貨として機能するという予想があったが、現在はそういう実体がない」という意見だ。「暗号資産という名称に変えることが必要で、もし法律上暗号資産と呼び変えるのであれば、事業者も暗号資産と呼ぶことを徹底するのか、議論の余地がある」という見方も出た。
一方、ハッキング事件などが続く中、「新しい名称ができることで、新しい良いものができたと世間に誤解を与える可能性がある」と危惧する声も出た。研究会にオブザーバーとして参加した日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)会長の奥山泰全氏は、そもそも「Virtual Currency」には法定通貨以外という意味が込められていると指摘。法定通貨以外の領域における自主規制団体として仮想通貨交換業協会が発足しているため、「このまま走らせてほしい」と述べた。また事件が相次ぐ中、「名前を変えて売り出し直すというようなことはしたくない」と強調した。
仮想通貨はいわば無政府でもやっていけると無政府主義の人たちからは一目置かれているものだけあって、逆の立場の人間にとってはあまり歓迎できるものではないという事がこの記事からかなり見受けられると思います。
これからもこのような研究会は続くと思いますが、着地点がどこに設置するかのせめぎ合いがあると思います。
「なんで相場が動かないか分からない」仮想通貨取引所バイナンスのCZ 取引所ビジネスは「儲かっている」
仮想通貨取引所バイナンスのジャオ・チャンポン(通称CZ)CEOが、CNBCの仮想通貨番組「クリプトトレーダー」に出演し、なぜ仮想通貨相場が動いていないのか分からないと発言した。大手機関投資家の参入が相次いでいるにも関わらず相場が動かないことについて、CZも理解に苦しんでいるようだ。
ウォール街の大手金融機関フィデリティやバックト(Bakkt)の参入表明で相場が動かないなら、何がきっかけになるかという質問に対してCZは、「わからない」と答えた。
「難しい質問だ。本当に何かわからない。2年前に同じ質問をされた時、私はICOと答えることはできなかっただろう。(中略)機関投資家の参入は間違いなく大きなきっかけになるはずだ。価格は安定し、健全な市場の形成につながる。なんで価格が動いていないのかわからない。何がきっかけになるかはわからないよ。しかし、遅かれ早かれ相場は動くだろう。何かがきっかけになるよ」
またCZは弱気相場における取引所ビジネスについて「まだ儲けが出ていて、とても健全なビジネスができている」と発言。年初来で仮想通貨市場の時価総額は70%ほど減少する中、相場の低迷は不安材料か聞かれたCZは、「そんなことはない」と答えた後、次のように述べた。
「確かに1月と比べたら(取引高は)90%近く減少している。(中略)しかし1年や2年前と比べたら、かなりの取引高だよ」
CZは、新規利用者の登録や上場コインの数が着実に増えている点も指摘した。
一方、多くの機関投資家が利用しているとされるOTC(店頭)取引については、「取引所と同じ規模の取引高があると聞いてたことがある」と指摘。情報サイトCoinMarketCapに掲載されている取引高では、「少なくとも50%ほどの取引高が正確に反映されていない」と解説した。
それでも市場が停滞しているという事は、仮想通貨事態に魅力を感じていないと思う人が多いのか、まだまだ仮想通貨取引におけるリスクが高いという理由から断念しているなど、様々なことが想像されると思います。
「なんで相場が動かないか分からない」仮想通貨取引所バイナンスのCZ 取引所ビジネスは「儲かっている」 | Cointelegraph
仮想通貨取引所セキュリティランキング、最高はクラケン=露サイバーセキュリティ企業
サイバーセキュリティ企業グループIBは、仮想通貨取引所のセキュリティ格付けを発表した。米テクノロジーメディアのネクスト・ウェブが6日伝えた。
ロシア本拠のグループIBが暗号資産保険プラットフォームのCryptoInsと共同で実施した調査によると、最も安全なプラットフォームは、日本市場から撤退した米クラケン。反対に、最もリスクの高い仮想通貨取引所は、1日あたりの取引高で世界第2位のOKEx、フォビ・プロ、日本のコインチェックだった。
グループIBとCryptoInsnよると、両社は世界で初めて、仮想通貨取引所が保有する通貨をカバーするのに必要な保険料算出の評価システムを開発した。仮想通貨の保険ポリシーには、ハッキングによる仮想通貨の盗難や違法行為などによる損失が含まれている。この評価システムは、テクニカルセキュリティのレベル、保管方法の信頼性、リスク管理、本人確認(KYC)や反マネロン(AML)などを考慮しているという。両社は仮想通貨取引所に格付けに使ったメトリクスの詳細は明らかにしなかった。
ICOrating.comが10月2日に発表した類似の調査によると、仮想通貨取引所コインベースとクラケンが最もセキュリティスコアが高く、最も低かったのはOKコインだった。調査対象は1日の取引高が100万ドルを超える仮想通貨取引所100カ所で、グループIBが最低にランク付けしたOKExは、ICOrating.comでは42位、フォビは47位だった。日本の取引所で最高位にランクインしたのはビットバンクで22位、次点はビットフライヤーで37位という結果だった。
仮想通貨取引所のセキュリティは、市場への参加者を増やすためにも重要だ。コインテレグラフが以前伝えた通り、ここ8年間でハッキングされた取引所数は31カ所で、総被害は13億ドル(約1478億円)相当にのぼる。
仮想通貨はネットワーク上にある為、どうしてもハッキングなどのネット攻撃に遭いやすい事がある。
その中でもしっかりとしたセキュリティ対策をしなければならないし、これから仮想通貨をもっと普及させたいのであれば、かなり重要な問題だと言えると思います。
仮想通貨投資会社「次の強気相場でアルトコインは最大のポテンシャルを秘めている」
アルトコイン上昇を予想
2017年に仮想通貨市場は大きな成長を遂げ、元祖仮想通貨ビットコインを始め、多くのアルトコインも急激に高騰した。
しかし、2018年に入ってから、仮想通貨市場は下落の一途をたどっており、ビットコインは-54%の下落を記録し、アルトコインでも、イーサリアムが-74%、XRPが-78%、ビットコインキャッシュが-82%、ライトコインが-78%と、その価値を著しく下げている。
CoinMarketCapのデータでもわかるように、昨年末のアルトコインバブルは、市場全体が下落相場になると一変、取引所上場も比較して少ないアルトコインの出来高の減少は著しく、ビットコインとの差が再度開いていく状況が見受けられている。
極端な弱気相場であれば、上記の結果を見る限り、仮想通貨の中ではビットコインの下落率が一番低く、市場の中では比較的安全であるとされ、資金の逃避先の一つにもなっていたと考えられる。
Campbell氏の発言
そのように悲観的な相場である中で、New Wave CapitalのCEOを務めるEric Campbell氏(以下、Campbell氏)は、弱気相場ではアルトコインからの資金流出が続いていたが、”今後の到来が期待されている強気相場では、小規模なアルトコインに大幅な上昇が見込める”と発言したことが、Yahoo Financeのレポートで明らかになり、話題を呼んでいる。
Campbell氏の経営するNew Wave Capitalは、自称初の仮想通貨ロボアドバイザーで、一般投資家、認可された投資家(Accredited investors)を問わず顧客を受け入れているが、同社は弱気相場の真っ只中に創業されたにも関わらず、口座を解約した人は未だ出ておらず、逆に追加で投資を行う人々が多いことについて言及、弱気相場で積極的な投資を行うことの出来る人々は長期的な視点を持っていることが多いことを明かした。
このような自社の口座状況や、弱気相場での投資家の動きを見て、プロジェクトへの投資の可能性を見出しているようだ。
同社は、BTC、ETH、BCH、XML、LTC、ETC、ZEC、OMG、GNT、PAY、NMR、CVC、BAT、ZRXの15種類の通貨に顧客資金を投じており、四半期ごとにリスクやアルゴリズムを参考にその投資比率が変更されている。
同氏は、アルトコインへの可能性を示唆こそしているものの、投資戦略として現在の弱気相場での投資比率においては、New Waves Capitalで、ビットコインが最も大きな割合で保有されていることを明かしている。
しかし、Campbell氏は既述の通り、今後の強気相場ではアルトコインへの資金流入が活発になると見ており、特に、現在ビットコイン投資を行っている人でも聞いたことがないような時価総額が低い仮想通貨が最も上昇すると指摘し、以下のようにコメントしている。
「時価総額の低いアルトコインこそが最大の可能性を秘めていると私たちは考えている。弱気相場では、多くの人々がアルトコインから、比較的安全で回復力のあると考えられているビットコインに資金を退避させた。しかし、将来的にまた強気相場が到来した場合、多くの人々はアルトコインに積極的に資金を投じていくと予想している。」
昨年の強気相場に仮想通貨投資に手を出し、高値で買ってしまい、今年の弱気相場で下がった段階で、安値で売却してしまう人々も多く存在していたことも事実としてあると述べたCampbell氏だが、相場が上向きになることでのアルトコイン相場高騰の再来には十分な可能性を見ているようだ。
アルトコインへの注目
さらに、仮想通貨取引所Coinbaseは、先日Series E資金調達ラウンドで約330億円の資金調達に成功しており、国際進出、仮想通貨ペアの迅速な追加、仮想通貨実用性の向上、業界への企業の進出の促進の4つの分野に注力していくと既述された。
その仮想通貨ペアの迅速な追加という分野では、現時点で取引所Coinabaseに上場させることの出来る仮想通貨、トークンが市場に数百存在していると言及し、将来的には数千種類の通貨を取り扱って行きたい方針を明かしている。
新規上場ポリシーを刷新し、これまでの申請方法からオンラインの申請方式に切り替えることで、取扱通貨の種類を急速に拡大する意向示していることから、海外展開をしつつ、各国の規制に準拠した形で通貨上場の展開も進めていく形になるが、特に数千種類のアルトコインを扱うことを考えると、時価総額下位の通貨も入ってくるため、その影響は計り知れないだろう。
実際に、Coinbaseの上場プロセスの厳しさから期待する声も大きく、信頼性にかける時価総額が低い通貨はより、このような上場プロセスの恩恵を受けやすくなっていると言えるだろう。
さらに、世界最大級の仮想通貨取引所で多くの取引ペアを提供するBinanceやUpbitも海外に拠点を増やし、対応する法定通貨を増やしていく計画を発表しており、市場全体の並みに極めて高い連動率を見せていたアルトコインが、個々のプロジェクトの評価や個別ファンダメンタルズ要因の反映が行われる土壌は少しずつでき始めているといえる。
その意味では、今後アルトコインへの投資の敷居も下がり始めており、昨年末の軒並み暴騰するアルトコイン相場とは異なり、個別に評価された通貨が上昇する違う意味でのアルトコイン市場が形成されるかもしれない。
仮想通貨の今後として、ビットコインではなく、ビットコインキャッシュが良いという意見も多く聞かれるし、リップルなどのアルトコインも今後伸びるのではという予測が多く出ている。
アルトコインがどのような軌道を辿っていくのかが予測しづらいだけに、今後をしっかりと見極める力が必要なのだろうと思う。
カナダの仮想通貨取引所が消滅 資金持ち逃げ疑惑も
カナダの仮想通貨取引所が消滅
資金持ち逃げ疑惑も
カナダの仮想通貨取引所メープルチェンジが「支払いのための資金が底をついた」ことを理由に突然取引を停止した。顧客を騙して資金を持ち逃げする失踪詐欺(Exit Scam)ではないかという見方も出ている。
メープルチェンジはツイッターで「支払いのための資金が底をついた」と発表。現在はツイッターアカウントも閉鎖されている。閉鎖される前のツイッターはここで確認できる。閉鎖前、メープルチェンジのツイッターのフォロワーは2000人に満たず、米国最大の仮想通貨取引所コインベースの100万フォロワーの500分の1未満だった。
(引用元:SCRIBD 「メープルチェンジのツイッター(削除前)」
CCNによると、ツイッター削除の1時間ほど前、メープルチェンジは「バグ」が発生し、何者かによって取引所の全ての資金が引き出されたと発表していたという。
資金持ち逃げのサイン?
メープルチェンジは、顧客を騙して資金を持ち逃げする失踪詐欺(Exit Scam)を働いたのではないかという見方が出ている。
CCNは失踪詐欺の兆候をいくつか指摘。まず、仮想通貨取引所がSNSを削除してまで消える必要はない。次に「バグ」の発表と取引所の完全消滅までの時間が短いことも一つの兆候だという。
さらにメープルチェンジは、過去1週間でビジネスを活発させていて、取引所を閉鎖したタイミング的にも失踪詐欺の疑いが高いそうだ。
このような問題が起こると確実に仮想通貨市場全体に波及し、価格の下落が予測されるでしょう。
コインチェック事件以降かなり廃れてしまっている仮想通貨市場だけに、今後しっかりとした上昇材料がない限り浮上が難しいと思ってしまいます。
ビットコイン先物期日にほぼ無反応 通説崩れる? | Cointelegraph
マレーシアの副大臣が訪問、ウクライナの人気取引所へ上場
マレーシアの副大臣が訪問、ウクライナの人気取引所へ上場
マレーシアの経済産業省の副大臣である Datuk Seri Shamsul Iskandar Md. Akin氏が、ネムブロックチェーンセンターを訪問したことが判明した。
ネム側は、ブロックチェーンとネムについてのユースケースを副大臣に説明したという。
同センターは昨年、クアラルンプールに建設中であった、1万平方フィート(約1千平方メートル)の規模のNEM専用のブロックチェーンセンターのことだ。
アクセラレーター、インキュベーター及び共同スペースとして使用される目的となる。
さらに本日、ウクライナの仮想通貨取引所である EXMOにネム(XEM)が上場したと発表が行われた。
XEM/BTC、XEM/USD、XEM/EURのペアで取引可能となっている。
EXMOは、ウクライナ国内で人気の仮想通貨取引所となっており、取引高も比較的高い取引所だ。
ネム、リップルがかなり仮想通貨業界の中で輝きを出しているだけに、他の仮想通貨がかなり影をひそめる状況になるだろう。
仮想通貨と ICOの規制枠組みの中での明確化を助言
証券市場利害関係者グループの助言
EU証券市場の監視機関である、欧州証券市場監督局(ESMA)の内部組織で、ESMAと証券市場参加者との協議の促進や、政策策定に対する技術的助言を行う、証券市場利害関係者グループ(SMSG)は、既存の規制の下で、仮装通貨とICOを規制する方策についての助言をまとめた報告書を発表した。
10月19日付の報告書は、投資家へのリスクに焦点を当てており、大部分の仮想通貨とICOの規制は既存の枠組みの中で行えるものの、そのためには、「コモディティ」や「有価証券」など関連用語の解釈範囲を示すことなどを含む、より明確なガイドラインの提供が欠かせないとしている。
その中で、譲渡可能な支払いに使われるトークン(ビットコインなど)や、ユーティリティトークンは投資商品と同様に扱われることが多く、投資家保護と市場における不正行為取締りという面においては、その譲渡能力と代替性の観点から、従来の資本市場におけるリスクと非常に類似したリスクが発生すると述べている。
そのため、適応する既存の規制の枠組みとして、1月に施行されたEUのMIFID II(第二次金融商品市場指令)を挙げ、ESMAは、この法令の下で仮装資産の規制を検討し、MiFID II条項の明確化を促すべきであると助言している。
また、SMSGは、ESMAにはEU規制の条項を変更する権限はないという認識を示しつつも、これらのトークンを、MiFID IIの金融商品リストに加えるよう に欧州委員会へ提言を行うことを強く勧めている。
そして、このようなトークンがMiFID金融商品になった場合、支払いトークンの流通市場も、市場濫用行為規制(MAR)の対象である「多角的取引施設」(Multilateral Trading Facility=MTF)または「組織化された取引施設」(Organised Trading Facility=OTF)として認定される枠組みが整い、該当トークンに関する投資助言業者も、MiFIDの対象となる。
なお、この報告書では、暗号トークンを次のような3種類に分けている。
この中で、ユーティリティトークンに関しては、譲渡可能なものは投資リスクの面からも、上記のMiFID II規制で取り締まる必要があるが、譲渡可能でないユーティリティトークンに関しては、規制される必要がないと述べている。
また、「資産トークン」とは、「新規ビジネスの資金調達」に使われるもので、コモディティまたは有価証券としての役割を果たす、と定義している。
その上で、SMSGは、該当トークンが、金融商品であるか、譲渡可能な証券であるかを判断する必要があると述べている。
そして、ESMAが、MiFIDが言うところの「譲渡可能証券」の定義を明確にした上で、財政的権利を与える譲渡可能な資産トークンについては、MiFIDの「譲渡可能証券」とみなすべきかどうかについても、はっきりさせるべきだと、SMSGは助言している。なお、資産トークンが譲渡可能でない場合には、規制の必要もないと述べている。
さらに、この報告書で、SMSGは、トークンを基盤にしたスタートアップのための、国によるサンドボックスやイノベーションハブを過度に規制すべきではないが、同時に、「国によるイニシアチブの十分な質、透明性、並びに法的安全性」に関する調整が必要であるとの見解を示している。
ICOが有価証券としての規制対象となるか
この報告書に先立ち、ESMAは、今月初めにICOが有価証券としての規制対象になるかどうかは、ケースバイケースで見極めるとの方針を発表している。
またESMAは、今年2月には、2018年の優先事項として、仮想通貨やICOを含む金融イノベーションの分析と対応を挙げていたが、2019年には、重要優先事項の一つとして、仮想通貨およびフィンテック活動の監督関連事業に、111万ユーロ(約1.5億円相当)の予算を割り当てたことが明らかになっている。
さらに、世界的な規制動向としては、今月金融活動作業部会(FATF)の総会が開催され、来年6月を目処に、仮想通貨規制のガイドラインを公表し、世界各国の司法当局の対応を求めていく方針を明らかにしている。
FATFは、資金洗浄対策やテロ資金対策などにおける国際的な協調指導、協力推進などを行う政府間機関で、仮想通貨が金融市場での存在感を増すに伴い、明確なAML(アンチ・マネーロンダリング)基準の提示が求められていたことを受け、今回の総会では、仮想通貨関連業者への規制ガイドラインの段階的更新を進めていくと、報告している。
また金融安定理事会(FSB)も、仮想通貨が現時点では世界的な金融の安定を脅かすものではないものの、いずれ最先端の新興技術である仮想通貨は既存の金融システムを脅かす可能性があるとの観点から、仮想通貨に対する監督や規制整備の必要性をとしている。
仮想通貨が驚異的な価格暴騰を見せ、仮想通貨元年と呼ばれた2017年に対し、2018年は仮想通貨規制元年とでも呼べるほど、世界の規制当局の大きな動きが相次いで報告されている。
このような中でなかなか良い材料が出てこないのは、このようにしっかりとした枠組みが出来上がっていないのに問題点を感じている投資家グループの存在も見え隠れしているのかもしれない。